生れあわせて / 木原訳
孤独な夜に
またたく星屑の青白い光の中
白黒写真の君は僕のところへやって来る
僕達が夢で形造られた時に
さびれた街角の風にあおられて
君は僕の心臓の鼓動を聞く
記録破りの猛暑の中
僕達が生れあわせた所で
もう一度の夜はなく、もう一度のキスもない
今度はもう無い、愛しい人よ、これでもう終りだ
あまりにも技が必要だ、あまりにも意思の力が必要だ
あまりにもさらけ出しだ
法律にでも従うようにして、君は来て、君は見た
君の母さんと同じように、君は若くして結婚した
君は何度も試みたが、僕は滑って落ちた
君はこんな気持に揺いだままの僕を置いて行った
上昇していくカーブの上
自然の手口によって心の隅々まで試される所では
受けるに値しないものは何ひとつ得ることが出来ない
僕達が生れあわせた所では
君は一度僕に迫った、君は再び僕に迫った
君は情熱を絞め殺し、代償を支払おうとする
愛しい人よ、あの火は
まだくすぶっている
君は雪だった、君は雨だった
君は縞柄だった、君は無地だった
愛しい人よ、これより真実な言葉は
語られたことがなく、壊されたこともない
神秘の丘の上
霧に包まれた宿命の蜘蛛の巣に
残されている僕の脱け殼を見届けておくれ
僕達が生れあわせた所で
Born In Time / Bob Dylan
In the lonely night
In the blinking stardust of a pale blue light
You're comin' thru to me in black and white
When we were made of dreams.
You're blowing down the shaky street,
You're hearing my heart beat
In the record breaking heat
Where we were born in time.
Not one more night, not one more kiss,
Not this time baby, no more of this,
Takes too much skill, takes too much will,
It's revealing.
You came, you saw, just like the law
You married young, just like your ma,
You tried and tried, you made me slide
You left me reelin' with this feelin'.
On the rising curve
Where the ways of nature will test every nerve,
You won't get anything you don't deserve
Where we were born in time.
You pressed me once, you pressed me twice,
You hang the flame, you'll pay the price,
Oh babe, that fire
Is still smokin'.
You were snow, you were rain
You were striped, you were plain,
Oh babe, truer words
Have not been spoken or broken.
In the hills of mystery,
In the foggy web of destiny,
You can have what's left of me,
Where we were born in time.
翻訳メモ
ボブ・ディラン の "Born in Time" の翻訳。原詩は bobdylan.com > "Born in Time"にある。
ディランの歌でどれが好きかと問われたら、今はこの歌を第一にあげる。
この歌の詞にはいくつかのバージョンがあって、それぞれ、少しづつ異っている。スタジオ録音版、ライブ録音版、海賊版、エリック・クラプトンが歌っているバージョン、、、等々。ここでは、bobdylan.com にあるスタジオ録音版の詞を採った。詩としては、これが最も完成度が高いと思う。
もちろん、歌詞だけを取り上げても、大した意味がないことは、十分に判っている。この歌については、特にそうだろう。
けれども、この歌を聞くたびに積り重なっていく思いは、こうでもして吐き出さなければ収拾が付かなくなった。
自画自賛で申し訳ないが、この歌詞の日本語訳としては、世の中にあるどれよりも良いものが出来たと思う。是非、歌を聴きながら読んでいただきたい。
2006年1月8日
最終更新日 : 2011-01-19